私は高校に入るとほぼ同時に、自動車学校に通い始めた。
そして16歳の誕生日。
見事、bikeの免許を取得するに至った。
別にグレていたわけではない。
bikeがただ欲しかったのだ。
しかし別にbikeそのものが好きだというわけではない。
要するに私は、翼が欲しかったのだ。
高校1年生の夏休みになると、
翼の生えた自分を止めることができるのは赤信号くらいのものだった。
なにしろ、自分の好きなところには自分の力で行けるのだ。
この生まれて初めての経験、そして自分が有した単純な能力に狂喜した。
夏休み中、まったく勉強などせずに、
blueのTZR250で秋田を風になって飛び回った。
おかげでそれが大学受験の時に少々響いたが、
世界の広がりを目の当たりにして、勉強などしていられるはずがなかったのだ。
その頃を象徴するのが仁井田の南校前にあった「寶龍」だ。
これは札幌の総本山を頂点とするチェーン店で、
当時秋田市内に3,4店舗ほどあった。
別にそれほど人気のある店でもなかったような気がするが、
そこのラーメンの味は私にとっては16歳の青い青い夏なのだ。
初めて自分の足で行って、自分のお金で(お小遣いではあるが)、
自分の意思で食したラーメンなのだ。
もちろん一人でラーメン屋に入るというのも初めての経験だった。
しかし、秋田市内に「寶龍」は突如なくなる。
もう今ではあのラーメンを味わって当時を思い出すこともできない。
ところが、先日北海道に行った折、ホテルまでの帰路に「寶龍」があったのだ。
そう、ここは「寶龍」の総本山なのだ。
これは!と思い満腹を押して店内になだれ込んだ。
有名人の色紙がたくさん貼られてある懐かしい店内の雰囲気
まるであの「寶龍」とは違う総本山の味だったが、
思い出すものはしっかり思い出すことができた。
楽しかった夏ももうそろそろ終わり。
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