エロい「なまはげ」が世間を騒がしてますが、
私としては別に驚くことでもないだけに大したニュースではないと思っていたんですが、こうも連日Yahoo!のトップに躍り出られるとちょっと触れてみたくなります。
「なまはげ」という伝統的な行事は秋田県の代名詞にさえなってます。
しかし秋田県全土からみれば、それが行われている地域はごくわずかです。
県南・県北の田園地帯ではもちろん、
秋田市などの沿岸都市部(一部を除く)でも行われていません。
という事実からもわかるように実は「秋田県」というよりも、
東北西海岸の男鹿真山、太平山、岩木山、鳥海山、出羽三山などの、
いわゆる霊山を中心として派生している伝統行事なんです。
起源や由来についてはいろんな説がありますが、
私は古代の修験道の名残なんだと思っています。
見た目や名前や目的は多少異なりますが、
日本全国の霊山の麓集落には似たような信仰や伝統行事があります。
それは鬼だったり天狗だったり得体の知れない魔物だったりしますが、
古代の修験者はこういう形で村々を廻り、供物の提供を請けていたでしょう。
特に真言系にその傾向が強いと思います。
「なまはげ」が悪魔払いを目的にして印を結ぶことも無関係ではないでしょう。
徐福だとか漂流ロシア人とかの説は酒の席ではいいネタかもしれませんが、
残念ながらちょっと信じられません。
ちなみに「なまはげ」に類似した行事は日本にとどまらず、
全世界に広く分布はしています。
ミュンヘンのナマハゲ「クランプス」
今回の事件でいろんな原因や環境要因が分析されてニュースになったり、
関係者がいろんな苦慮をしてますが、
そもそも「なまはげ」なんてもともとそんなもんなんですよ。
と、いうことをしらっと言えるのも、
私は実は現役のナマハゲプレイヤーだからです(男鹿ではありません)。
しかももう10年以上、スタメンを続けている。
小正月になると「なまはげ」が廻ってくる地域に私は生まれ育ちました。
幼少の頃は、あれは本当に魔界の山から降りてきた絶対神なのだと思っていて、
畏敬の念と恐怖に怯えていたもんですが、
小学校高学年になって度肝を抜かれたのは、
「なまはげはただの泥酔した人」
だとわかったことです。
あの絶対的存在がへべれけに酔ったただの人だなんて・・。
相当な衝撃を受けましたがそれが真実でした。
いくら伝統であろうが神事であろうが、
「なまはげ」は基本的にはいつだって「極度に泥酔した若者」なんです。
だから、問題くらいはいくらでも起こすのです。
家々を廻れば、若い嫁のケツくらいは当然もむこともあるだろうし、
子どもを小突いたり、物を壊したり、大いに暴れ回る。
そんなことは当たり前だし、何度も見てきたことです。
だって泥酔してるんですから。
「なまはげ」じゃなくたって部長や課長補佐あたりだってそれくらいするでしょう。
明治の頃には警察の介入もあり、一時中止になった地域もあるとのこと。
もともとそういう危険性のある「神聖行事」なのです。
しかし、どんなに暴れて問題を起こしても、
それを許容する懐の深さがそのコミュニティにはあるのである。
度が過ぎれば、その家の当主にぶん殴られるだけだ。
勿論、罪を犯すことは許されないことだし、
今回の場合は本人がその地域と関係ない人であり、
しかもトンヅラしていることからしてもう論外です。
弁護するつもりなど毛頭ありません。
しかし、その辺のリスクを許容する覚悟がないのなら、
「なまはげ」を扱うべきではないのです。
だから本来「なまはげ」はその町内から出てはいけないんです。
見たいのなら見たい人がそのコミュニティに「礼」をもって入るべき。
というのも、
実は私は「なまはげ」を政治や観光に使うことを良く思っていない人の一人なんです。
「伝統文化は死守すべきものであっても、決して見世物ではない」
というのは私の持論みたいなものですが、
「なまはげ」は秋田県の代表でも象徴でもマスコットでも、
秋田を窮地から救い出す正義の救世主でもなんでもないんです。
まして秋田県人が誇りに思うべき筋合いのものでもなければ、
逆に不名誉に思うべき筋合いのものでもありません。
単にそのコミュニティの生活に密着した神秘的な土俗なんです。
だたそれだけです。
ただそれだけなのが素晴らしいのです。
そろそろ「なまはげ」をそっとしておいてください。
いずれ遠くない日。
「人口流出」というしたたかで恐ろしい魔物が、
この素晴らし過ぎる生きた伝統行事の息の根を止める日が来るのですから。
それほど「担い手=若者」の問題は深刻です。
現場は日々、叫喚しています。
笑い事でも他人事でもありません。
なぜならそれは「あなたのせい」かもしれないのですから。
あなたはいったいいつまで、
遠いところにいるふりをして、
そうやって無関心をよそおって、
私たちが滅びゆくさまを、
ただ指をくわえて、
ながめているつもりなのか。
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