いつものように飲み会が終わり一人夜の街に放り出される。
軽く一杯やりながら読みかけの長曽我部元親を読むべく、さふらっと一軒。
なにしろ代行に電話したら90分待ちだと言われたのだ。
囲炉裏のカウンターで純米酒を一杯。
囲炉裏の中央部に半被を着た40代後半の女性がいて、
一生懸命に切り盛りしている風景がとてもいい。
が、この女性。
まったく要領を得ない。
「くろも酢下さい」とorderしたら「くろもって何ですか?」と聞いてきた・・。
「くろも」っていったら男鹿半島で獲れる特有の天然もずくのことで、
だだみと並んで今が旬の酒肴ではないか。
その席に座っているのにそんなこともわからないの???
っていうか何で俺に聞く必要があるの???
結局、「くろも」が切れているということで「あおさ酢」をすすめられたが、
今度は私が
「あおさ酢って何ですか?」って聞いたら「さあ私も聞いたこともない」
という・・。
明らかに夜の素人なのである。
普通の中流階級のお母さん。
しかも秋田弁も使えないっぽい。
ご覧のように接客はグダグダ。
そしてぼーっとしたり、下を向いてふさぎこんでみたり・・。
やる気などまったくなし。
疲労困憊の様子を全身で表現している。
しかし、こういう光景はよくみることができるのだ。
実はこのお母さんたちは、
息子を東京の学校に出していて、その毎月の仕送りのために、
こうして無理して真夜中まで働かなければならないのである。
仕送りの平均は10万円くらい。
このお母さんは2人を東京の大学に出しているというので、
月にしてなんと20万円。
それに学費やらなにやらあわせるととんでもない費用になる。
月に20万円以上のお金を捻出できるほどの
所得水準の家庭が秋田にどれだけありますか???
だからお母さんは無理して、
昼はイオンでレジを打ち、夜は居酒屋で慣れない給仕をするのです。
いや、しなければならないのです。
そうして稼いだお金は、息子や娘を経由して、家賃として東京の大家の口座に入り、あるいは食費として東京のスーパーのレジに入る。
そこまでして育てた息子や娘は、もはや学を修めて戻ってなどきやしない。
このお母さんも、お父さんも、行く末は一人で寂しく死ぬのだ。
死に目にさえ戻ってこない者も多いだろう。
人間、いたるところに青山あり、とはいうが、
故郷より輝く山がどこにあるというのか。
秋田はここまで中央に巻き上げられなければならないのか。
人も物も金も・・。
よく戦争にならないものだと思う。
自然状態であれば、
ここまで搾取された民は武器を持ち、命を懸けて起ち上がるだろう。
秋田人はよほど温厚にできている人々なのか。
そうだとしても、そろそろ限界なのだ。
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