Tiger Uppercut!~ある秋田人の咆哮
サブタイトル タイガー!タイガーアッパカーッ!秋田の歴史、文化、グルメ、時事、そしてステキな未来の書き下ろし!
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美郷のロザリオ

2007 年 5 月 8 日 by TU

山美しく、水麗しい、美郷。

奥羽山脈に屹立する真昼岳の麓にあるこの見事に美しい山村から、
「隠れキリシタン洞穴」が佐々木○也氏(秋田市・会社経営)によって発見されてからすでに8ヶ月・・。→天国への洞穴 ~Stairway To Heaven
2007年5月5日、子どもの日。
ようやく私の属するあるNPOからこのたび、
非公式にではありますが少数精鋭の調査隊が派遣されました。

発見者の佐々木氏を隊長に早朝の靄の中を東へ東へと走るワゴン。
善知鳥という古代を連想させる地名だけを頼りに走ること一時間半。
子どもの日だというのにも関わらず、
子どもたちをほったらかしてまでやってきました奥羽山脈!

真昼岳の麓に車を置いて山中に入る調査隊。
ここはもちろん今、熊などの猛獣が出ても全く驚かない山である。
しかしそれ以上に心配なのは、昨夜からの激しい雷雨。
鉄砲水を常に警戒しながら身震いする思いで沢伝いに歩を進める・・。

朝靄の森を切り込み進むこと数十分。
懐深い山の中、ついに洞穴を発見しました。

400年の間、まるで変わることのない佇まいで洞穴、
いや、礼拝堂は我々を迎えてくれた。
正直に、驚きだ。
こんな山中にこんな大がかりな穴を掘ってまで
善知鳥のキリシタンは人目を偲んで、しかし逞しく礼拝していた。
信仰とはいったい何ものであるか。
この洞穴の奥にはその答え ~天国~ があるに違いない。

懐中電灯を翳しながら伏して前進する精鋭の藤田隊員。
あとに続く私、そして、佐々木隊長。
暗く長く冷たい土の回廊を少しずつ前進する。
そのとき!前方でおびただしい何者かの気配が!

ウギャーー!

という声を悲鳴を上げながら伏したまま大急ぎで後退する我々!
命からがら洞穴外まで戻りつくと
大量のメイジドラキー(吸血コウモリ)が外に出てくる!!!
まさに壮観!ほんと地獄!
なぜか予想もしていなかったこととはいえ、
コウモリが出るなど洞穴なだけにまったく納得ができるこの状況。
あまりにも納得ができるゆえに勇気を出してさらに調査を続けることに・・。

そして話し合いの結果、藤田隊員が単独で斥候にいくことに。
さようなら藤田隊員。
adiousという言葉をかけて見送る。

数分後、おおかたの予想に反して、
高感度カメラで洞穴内の様子を撮影して戻ってきた藤田隊員。
そこには衝撃的な映像が!
なんと洞穴の天井には50匹はいようかというamazingなメイジドラキーの大群がブランブラン!!!

写真をみて最高ヒキましたが、
ここまできて帰るわけにはいかないということで一致し、
悲壮にも前進を決意する調査隊一行。

斥候からの報告では、入口からの長い回廊を抜けると吹き溜まりがあり、
そこから左に折れるという。
その吹き溜まりにメイジドラキーの大ボスがいるということなのだが、
要するに洞窟内の構造としてL字型になっているということだ。

勇敢に進む。
俺たちは無敵だ。

頭上からドラキーどもの羽ばたきが聞こえる。
ムッとするいやな臭いが鼻を襲う。
うーむ、怖い。
うーむ、不快。
だけど、進む。
這いつくばって狭い洞穴を進む秋田の未来を担う若手経営者達・・。
俺たちはかなり痛ましい・・。

半死半生の心地で大ボスの間まで来たとき、左を見る。
そのとき、意外なものが目に入って息を呑んだ。

・・・ロザリオだ。

刮目して見て頂きたい。
彼らのロザリオは383年の時を越えて、
ここで土塵まみれの我々に発見されるのを待っていてくれたのかもしれない。
瞬間、頭が真っ白になり涙があふれそうになった。

 生きるということはなんと苦しいことか。
 生きるということはなんと切ないことか。

車に戻り真昼岳を背に走り出すと土砂降りの激しい雨が降り出した。
1624年8月16日 — 。
横手までこの道を牽かれて行き、全員斬首された彼ら。
彼らは今きっと、天国にいるに違いない。

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コメント / トラックバック 4 件

  1. こなつ より:

    お久しぶりです。
    大変な冒険譚を面白く、興味深く読みました。
    私は遠藤周作のキリシタン文学を暴風雨を受けるように読んだ時期があります。 
    遠藤文学では弱者に寄り添い続けるキリスト観が有名ですが、これはキリシタンの研究から導き出された彼独自の宗教観とも言われています。 しかし日本の悲惨な殉教者達の歴史を見聞きするたび、周作の眼力に圧倒されてしまいます。 
    彼らは、哀しみに寄り添ってくれる愛の存在がどうしても必要だったのでしょう。 暗闇に浮かぶ十字架にどれほどの願いが込められていたのか…けれど、ここでも神は「沈黙」したままで彼らを救いはしなかったのですね。
    彼らが最近列福されたというニュースを読んだ気がするのが、ちょっと救いです。 しかし…バチカン…遅すぎません!?

  2. T U より:

    こなつさん、ありがとうございます。
    キリシタンお詳しいんですね。
    私も興味を持ち始めてます。
    出羽では秋田でもまだまだ迫害に遭ったそうです。
    遠藤周作、今度読んでみます。
    ネストリウス派とカトリックが和睦したのも最近だと聞きます。
    この遅さ、悠さ。
    バチカンは歴史でなくて生き物なんですね。

  3. こなつ より:

    詳しいだなんて…遠藤周作の聞きかじり(読みかじり)なんですけど…(恥)
    ちなみにキリシタン関係の遠藤作品なら「沈黙」がオススメです。
    「島原の乱」後の宣教師とキリシタンの苦悩と信仰が見事に描かれています。 小説ですが、出羽のキリシタン理解の一助になるのではないかと思います^^
    バチカンは本当にそうですね~。
    でももう少し若返りしてスピードアップしてもいい気がします。

  4. T U より:

    「沈黙」ですね。
    神が「沈黙」したわけですね。
    深いな~。
    おすすめありがとうございます。

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プロフィール
     投稿者: TU
     紹介: 秋田市在住秋田人。会社を創業、 そして経営。現在30代前半。 人生の真夏。 好きなもの=「秋田」
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