3日もススキノで飲んでればもう現地人とおんなじだ。
文庫本を一冊片手に、颯爽と歩く。
ぼったくりの連中が絶対俺には声かけてこないのは、
決して初日に一度だまされたからではない。

自分の名前。
実はすごくいい名前なのである。
姓名判断や占いなどをやってもいい必ず結果をたたき出す。
小さい頃は自分はよほど幸運の星の下に生まれたんだろうと思っていたが、もちろんそんなことはない。
理由は簡単だ。
そういう名前を付けたからだ。
しかも親ではなく占い師が。

親父が川反（秋田の繁華街）で酔っぱらって路傍の占い師に金払って付けてもらったのが、自分の名前だそうだ。
当時、占い師の間で流行っていたのか。
けっこう同世代から下に多い名前である。
占い師がその場で調べていい結果が出る名前を親父に提案したんだろう。

このことを最初聞いたとき、いささかショックだった。
それをたまたま聞かされたのが15年くらい前。
そういうこともあり、
よく川反で飲んだくれていると路傍の占い師が恨めしく見えたもんだ。

当時、毎晩いたあの女占い師。
背筋がピッと張った座り方をして般若のようで色白の顔をした占い師。
鈴木京香のようにみえなくもないその顔を見ればほとんどの秋田人は、

「あっこの人か！」

と言うに違いない。
それほどの占い師なのだがしばらく見なかったので、
衰えて引退したか、流転したか、いずれもう会うことないだろうと思っていた。

その占い師がなんと！
ススキノの路傍にいた！
15年以上経つというのに何ら変わってない。
容色衰えるどころかさらに怪しげに異彩を放っていた。
不思議だ。
しばらく立ちつくしてしまった。
自分の名前を付けた占い師もこの人だったのかもしれない。
世にも奇妙な物語の「時の女神」を思い出した。
「時の女神」→http://www.youtube.com/watch?v=edLzhTqUjLA

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